この記事はビジネス+IThttps://www.sbbit.jp/article/bitsp/49286に掲載されたものです。
企業のクラウド活用が進み、システムはますます複雑化している。レガシーなオンプレミスのシステム、複数のパブリッククラウドにまたがるクラウドネイティブなシステムなどを適切に管理できている企業は、どれくらいあるだろうか。こうした状態を放置すると、多種多様の複雑で深刻な問題が発生する。ここでは、具体的に発生する問題と、問題を回避してハイブリッド・マルチクラウドを効果的に活用する対策を整理する。
今やパブリッククラウド活用は、企業システムのインフラとして当たり前の選択肢になった。さらに最近は、クラウドの多様化も進んでいる。Amazon Web Services(AWS)やMicrosoft AzureやGoogle Cloud Platform(GCP)など、複数のクラウドを目的に応じて組み合わせる活用例も少なくない。
一方で、オンプレミスのニーズも依然として高い。特にハイパフォーマンスなシステムや高いセキュリティを求められるシステムでは、オンプレミスにメリットを見出す企業は多い。現実に、いったんはクラウドで運用したシステムをオンプレミスに戻す例もあるようだ。
このように、企業システムはハイブリッド・マルチクラウド化が急速に進んでいる。そこでは、複雑化したシステムの運用を始めとするさまざまな問題が起きている。
1つは「コスト」だ。従量課金型のクラウドは、そもそもコストの見積もりが困難だ。また、組織ごとにバラバラにクラウドを導入すると、企業全体としてのコストが見えなくなる。使われなくなった仮想マシンやストレージが放置され、ムダなコストが発生していることも多い。
2つ目は「リードタイム」だ。通常、クラウドサービスが利用可能になるまでには、ユーザーの申請を起点とした承認プロセスがあり、承認後はIT部門によるクラウド側の環境設定などが必要になる。大企業になると、それだけで10日かかることも少なくない。途中で変更ややり直しなどが発生すると、リードタイムはさらに伸びてしまう。
そして3つ目が「サービス品質」だ。複雑化したシステムを人手に頼って管理すれば、必然的にヒューマンエラーのリスクは高まり、サービス品質の低下を招く。この3つの課題を解決し、ハイブリッドクラウドを適切に運用するにはどのような仕組みが必要になるのだろうか。
ハイブリッド・マルチクラウド環境が抱える「コスト」「リードタイム」「サービス品質」という3つの課題を解決するために必要となる仕組みについて、マイクロフォーカスエンタープライズ 営業統括本部 第二営業本部 和田 馨氏は、次のように説明する
マイクロフォーカスエンタープライズ
営業統括本部 第二営業本部
和田 馨氏
「まず、クラウド利用の『リクエスト管理』です。事業部ごとにバラバラで利用するのではなく、会社としてリクエストを一括して受け付けて管理する仕組みが必要です。次に、『リクエストに基づいてIT環境を自動的に構築』する方法を標準化する必要があります。利用までの時間を短縮するためです。そして利用開始後は、『ユーザーの利用状況を可視化し、コスト管理』しなければ適切な運用は難しいでしょう」(和田氏)
このすべてのニーズに対応できる製品が、マイクロフォーカスの「Hybrid Cloud Management X」(以下、HCMX)である。これは、ハイブリッドクラウド活用における「人」「モノ」「金」「プロセス」を統合管理する製品だ。マイクロフォーカスエンタープライズ プリセールス統括本部 プリセールス 竹森公彦氏は、次のように説明する。
マイクロフォーカスエンタープライズ
プリセールス統括本部
プリセールス
竹森 公彦氏
「通常、プロジェクトを立ち上げるには、まず企画を担当する部門が企画書を作って上長の承認をもらい、コスト計算して環境を選択・決定します。そこでIT部門がエンジニアをアサインし、サーバを作ったりアプリをインストールしたり......という作業が必要です。また、会計部門ではコスト計算や予算配分などを担います。こうした一連の流れをITILベースで管理し、プロセス全体の可視化、投資の最適化を実現する製品がHCMXです」(竹森氏)
HCMXでは、エンドユーザー向けにセルフサービスポータルとサービスカタログが提供される。セルフサービスポータルには、オンプレミス・クラウドを含めた利用可能なサービスが集約されたサービスカタログが用意されていて、エンドユーザーはそこから利用したいサービスを申請する。
セルフサービスポータル
サービスカタログ
その際、「申請」に紐づいて関係者に承認フローが自動的に走り、承認後にIT部門により環境が設定される。そこで提供されるのが、各種テンプレートやクラウド展開を自動化するためのツールだ。こうしたツールを活用することで、IT部門は環境構築の時間を大幅に短縮できる。
「メールなどでのやりとりをポータルに集約することで、エンドユーザーとIT部門のやりとりを大幅に短縮できます。さらに、手動に頼っていた環境設定を自動化することで、環境を利用するまでにかかっていたリードタイムを数週間から1~2日にまで短縮することも可能です。さらに、自動化でヒューマンエラーを減らし、サービス品質の向上にも寄与します」(竹森氏)
IT運用者がカタログ管理者(CatalogAdmin)やクラウドのサービスデザイナー(ServiceDesigner)などクラウドマネジメントの職務を担うことで、クラウド管理、運用コストを一気に圧縮できる
ハイブリッド・マルチクラウド環境で、現在、多くの企業に共通する課題が「コスト管理」だ。従量課金型のクラウドでは、そもそもコストを事前に予想することが難しい。このため、ユーザーが利用しているオンプレ・クラウドのリソースをリアルタイムに可視化し、発生しているコストをリアルタイムに把握することが重要になる。HCMXが提供するのも、まさにこの仕組みだ。
「HCMXでは、ユーザーはさまざまな機能が一元化された『ポータル』から必要な環境を使うためにサービスを申請するのですが、ここで自らの利用状況をリアルタイムに確認することもできます。一定の金額になったときアラートを出す機能を備えるため、クラウドの使いすぎを防ぐことが可能です」(和田氏)
もちろんIT部門も、「誰が」「どのクラウドを」「どれくらい使っているか」をすべてリアルタイムに把握できる。コストの内訳を可視化して、コスト削減に役立てることも可能だ。
コストの可視化とレポート
「HCMXの可視化・レポート機能を使えば、たとえばリージョン別、インスタンス別、製品ファミリー別......など、さまざまな角度でコストを可視化できます。さらに、『インサイト機能』がコスト削減の提案もしてくれます。たとえば、管理者も環境が複雑すぎて気づきにくい利用状況も『○○の仮想マシンは○○円削減可能です』といったアドバイスをしてくれるのです」(竹森氏)
HCMXは、企業が導入済みのツールやアプリケーションとの統合が可能である点もその特徴だ。これにより、今あるツール類を活用しながら、ハイブリッドクラウド環境を運用・管理できる。さらに「ユーザーがライフサイクル管理できる」のも、他製品にはない点である。たとえば「スナップショット、リソースの変更、アクセス制御」などが挙げられる。──。この一連の流れを自動化し、必要に応じて変更・更新するための機能が豊富に用意されているのだ。
HCMXは、クラウドを積極的に活用している企業を中心に、業種を問わず広く導入が進んでいる。たとえば、ある大手企業では、事業部ごとに予算を持ち、それぞれが独自のクラウドを導入、活用していた。このため、企業全体でクラウドの利用状況が可視化されず、かつコストも最適化されていなかったという。
「そこでHCMXを導入し、必要なクラウドサービスを、事業部内だけではなく事業部をまたいで利用できる仕組みを構築しIT管理者がそのサービス全体を管理できるようにしました。その結果、事業部ごとの利用状況、コストが可視化され、企業全体でITコストを最適化できました」(和田氏)
この他にも、製造、通信、システム開発、インフラ、流通など、さまざまな企業がHCMXを導入している。今後、クラウドの活用が広がれば、HCMXを必要とする企業がさらに増えるのは間違いないだろう。
HCMXそのものも、今後、さらに機能拡張が予定されている。
「HCMXはオンプレミスとパブリッククラウドを、統合的に運用・管理するために必要な機能を備えています。さらに今後は、ここにネットワーク管理やストレージ管理も統合する計画です。弊社の開発サイクルは3カ月です。新しい技術があればすぐに取り込んで、製品に反映することを重視しています」(竹森氏)
また、他の事例ではHCMXとAWSを使ってクラウドのマネージドサービスを自動化することで、「クラウドのプロビジョニングの完全自動化」と関連業務の時間の短縮を図っている。設定に2日かかることもあった業務を20分に短縮することに成功し、毎月数百時間を容易に節約できる体制を整えているという。
企業システムのハイブリッド・マルチクラウド化は、今後も間違いなく進むだろう。それとともに、コストやリードタイムなどの問題が、企業を苦しめることになるはずだ。それを回避して、スムーズなハイブリッド・マルチクラウド化を実現するためにも、HCMXは検討に値するだろう。