[ALM/QC 12.20 販売開始] ALM/QualityCenterのラインナップ拡充:エディション別の比較

今回のリリースから、次の2つのエディションが加わっています。
  • HP QualityCenter Community エディション
  • HP QualityCenter Express エディション

 4つのエディションの機能の違いを比べるために、各々のメニューをならべてみたものが図1です。

図1:エディション別比較

QCEdition.png

同じ機能モジュールでも細かいところが違ってたりしますが、それはおいおい別投稿でご紹介するとして、大きな機能単位でなにが違うのか?を、その位置付け含めまずは比較していきましょう。

QualityCenter Community エディション
 今回新しく加わった、ローエンド向けのエディションです。"Community"の名の通り、コミュニティベースのサポートを前提とした、無償で利用できるエディションです。図1でおわかりになるように、機能的にはテスト管理と不具合の管理に特化したエディションです。
 ライセンス体系としては、
  • Namedユーザ(=ユーザ固定)で、最大5名様まで。
  • ライセンス料はかかりません。
  • サポートはつきません。弊社の米国オフィスが運営しているコミュニティに英語で問い合わせていただくことになります。が、あくまでもコミュニティベースなので、回答に対する義務等は発生しません。
というモデルのみになります。
 「最大5名様」なので、対象は小規模チームでのテスト管理を想定しています。QualityCenterに関心を持っていただいても、小規模での利用はこれまでのライセンス体系だとなかなか難しかったというのが正直なところでしょう。一方最近よくあるパターンが、オープンソースや他社の不具合管理やテスト管理ツールを使っている場合。小規模で使っているうちは順調に使えても、利用範囲が拡大したりデータ量が増えると途端にサーバーが動かなくなってします・・・ってなことで、本番利用ではQualityCenterをご検討いただくケースが国内でも散見されます(ありがたやありがたや)。でも、その場合問題になるのはUIが変わっちゃっうこと。「最初は小規模で使ってみて、うまくいったら横展開」というシナリオをお考えの場合には、Communityあるいは後述するExpressを最初の一歩としてお使いいただくには最適です。
小規模チーム向けということで、上位エディションに比べて、機能的には絞られています。
Communityエディションでの作業は、おおよそ次のような利用の流れを想定しています。
  • スケジュールの計画  プロダクトの"リリース"スケジュールを登録し、そのスケジュール内である種別のテストを実施する予定期間("サイクル"と呼んでいます)を定義します。例えば、「『新規開発機能のテスト』のサイクル」とか「『性能チューニングのためのテスト』のサイクル」とかいった感じです。
  • テスト計画の作成 次にこのスケジュール感をベースに、テスト計画を作ります。
  • どのようなテストを実施するか
  • 詳細なテストケースの定義
  • 前述のリリースやサイクルと組み合わせて、どのサイクルにどのテストを実施するか全体計画を作ります。
  • 実行単位の定義(例えば特定のサブシステムに関連するテストや、特定のテスターが実施するテストをグループ化する、みたいなイメージ)
  • テスト実行と記録 テストを実行して結果を登録します。もちろん、なんらかの不具合を発見した場合には、不具合も登録します。
  • 結果レポート これらの作業の進捗状況や、不具合等の品質関係の情報は、様々な形式のグラフやそれらを組み合わせたダッシュボードで、適宜把握することができます。
Communityエディションは、より上位のエディションが備えている、KPIやリスク管理、SCMやCIツールとの連携といった機能は備えていませんが、スモールスタートを可能にし、弊社の提唱する品質管理手法(HP QualityMethodology)の(極々)一端を垣間見ることができるエディションです。
QualityCenter Express エディション
 こちらも今回から加わったエディションで、小規模~中規模での利用を想定したエディションです。
ライセンス体系としては、次のようなモデルです。
  • Namedユーザ(=ユーザ固定)あるいはフローティング(= 同時利用数)で、最大20名様まで。
  • ライセンス料がかかります(これは弊社営業のほうへ別途お問い合わせください)。
  • サポートが提供されます(保守料のご負担が必要)。
 図1のメニュー構成を比較しただけでは、Communityエディションとの機能面での差がわかりづらいと思います。Expressエディションでは、Communityエディションの機能に加えて、以下の機能が追加されます。
  • 機能テストの自動化ツールHP Unified Functional Testing(HP UFT)との連携機能
  • マニュアルテスト・探索的テストツールであるHP Sprinterとの連携機能
  • アジャイルプロジェクト管理ツールHP Agile Managerとの連携機能
「サポートが提供」され、「上記の弊社ツールと連携」するという点を見ても、小中規模な実プロジェクトに公式にお奨めするエディションがExpressということになります。
 アジャイル開発を推進されるお客様に向けては、プロジェクト/チーム管理ツールとしてはHP Agile Managerを、品質管理ツールとしてはHP ALM/QualityCenter(Enterprise エディション)を併せてご提案してきました。が、アジャイル開発でのプロジェクトの規模感や、シンプルにテスト周りの管理をしたいという場合には、ビジネス要件やシステム要件といったより上流工程向けの機能を持ったこれらのエディションは、少々"Fat(重たい)"な感は否めませんでした。
 Expressエディションのひとつの狙いは、アジャイル開発チームに対して、HP AgileManagerと組合わせて利用できる「ちょうどよい程度の機能性を持ったテスト管理ツール」を提供する」ことです。その役割を担うのが、このエディションです。
ついでですから、Enterprise エディションとALMも説明しときましょう。
QualityCenter Enterprise エディション
 これは従来からあるエディションです。
ライセンス体系としては、以下のようになります。
  • フローティング
  • このエディション以上からSaaSもご用意しています。
  • ライセンス料がかかります(これは弊社営業のほうへ別途お問い合わせください)。
  • 保守料をご負担いただくことでサポートが提供されます。
このエディションになると、「大規模プロジェクトでもどんとこい!」の、品質管理の総本山みたいな位置づけになります。
 CommunityやExpressが、テストと不具合の管理に特化しているのと比べると、このエディションは、より「品質管理」の色合いが濃くなってきます。
 テストケースをたくさん用意し、自動化を推し進めていけば、短時間で大量のテストを効率的に実施できます。 しかし、本来の要件からかけ離れたテスト、入力値は違うけどよくよく考えると意味的に違いのないテストが多ければ、それは「無駄なことを効率的にやっている」だけに過ぎません。単なる「テストの管理」に留まらることなく「ニーズに対してきちんと応えているか」が品質としては重要です。
 Enterpriseエディションでは、上流工程のビジネス要件やシステム要件の定義・管理機能が提供されます。それらとテスト定義やテスト実行した結果、発見された不具合等の情報とが相互に関連づけられて管理されます(いわゆる"トレーサビリティ"ってやつですね)。これが大規模プロジェクトでの品質管理の総本山という由縁です。
 大勢で大量のリソースを管理するという点から、「ライブラリによる資産の再利用」や「リソースのバージョン管理機能」といった"リポジトリとしての機能強化"も、ここで強調しておきましょう。
HP Application Lifecycle Management(ALM)
 これだけ、名前に"エディション"がつきませんね。以前、QualityCenterには、Enterpriseエディションの上位にPremiereエディションというものが用意されていましたが、これが現在HP ALMに名前を変えています。
ライセンス体系は、Enterpriseエディションと同様です。
図1のメニュー構成を見てもお判りいただけるように、ALMになると機能が一気に増えます。
これら機能強化の狙いをまとめると、以下の4点になります。
  1. ライフサイクル全体の情報を管理して、プロジェクトの状況をより深い理解出来るよう支援する。
     外部のソースコード管理システムやCIツール、Eclipseのような統合開発環境と連携することで、管理対象をもっと広げようとしています。ソースコードの変更履歴やビルド結果のトレンドから、プロジェクトの状況をより深く理解し、問題の芽があれば早期に適切に対処できるよう支援しようというものです。  
  2. プロジェクト横断のレポーティングや再利用で、個々のプロジェクトだけでなく、組織全体としての品質向上活動を支援する。 
  3. 組織的な品質向上施策の一環として、テストラボの運用。 
     弊社のテストツール(HP UFTやHP LR)は、ユーザの手許にあるマシンからユーザ自身の手によって操作されるのが基本的な使い方ですがが、これらのツールを共有マシン上(これを"テスティングホスト"と呼びます)にインストールし、リモートで実行させることが出来ます(いわゆるサーバーサイド実行)。HP ALMを介することで複数のプロジェクトがテスティングホスト(とテストツール)を共有し、共有カレンダーに利用予約することで、指定された時間に指定されたテストセットを自動実行することができます(夜間バッチみたいだ)。KPIやリスクベース管理で、プロジェクトの予見性を高める。
  4.  KPIによるスコアカードや、リスクベースの品質管理で、プロジェクトリスクの早期発見 
  5.  日々の活動で蓄積されたテストの作業情報や不具合情報を元に、その時点での進捗や成果物の品質情報を様々な形態で可視化することは、プロジェクトの今の状況を知る上でとても重要です。しかし、さらなる開発の短期化やコスト削減を実現するためには、問題が大きくなる前の"芽"を発見して前倒しで対応することが必要です。弊社の提供する品質管理手法HP QualityMethodologyに準じたKPIによる管理やリスクベースの品質管理を実現するための機能がALMエディションには組み込まれています。
図2 KPIによるスコアカード例
ALMScoreCard.png

駆け足で紹介しましたが、各エディションの位置づけについて、ばくっと理解していただけたでしょうか?

スモールスタートから、組織的な品質向上の取り組みまで、品質向上活動のステージに合わせてラインナップが充実してきました。

この機会にぜひ評価版を触ってみてください。

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